ブラックフライデー / 値引き

ブラックフライデーの値引き率は、SKUごとに上限があります

2026年10月20日

2026年のブラックフライデーは11月27日、サイバーマンデーは11月30日です。値引き率を決めてクリエイティブとメールの準備に入る時期です。

値引き率は多くの場合サイト全体で一律に決められます。25%オフ、30%オフ。競合がそうしているから、去年もそうだったから。

第4弾で値引きの上限は率で決めて渡すべきだと書きました。今回はその上限の出し方です。

先に結論を書きます。値引きの上限はSKU(Stock Keeping Unit、在庫管理上の最小単位)ごとに違い、見込みのROAS(Return on Ad Spend、広告費に対する売上の倍率)から逆算できます。一律の値引き率は、ある商品には深すぎて別の商品には浅すぎます。

ROASが上がっても、赤字になる

第1弾と同じ48ドルの商品で考えます。1注文1点の前提です。

普段のROASは3.2。25%引きにしたブラックフライデーの期間にROASが3.6まで上がったとします。貢献利益 CM1(Contribution Margin 1、広告費を引く前)とCM2(広告費を引いた後)で比べます。

定価 25%引き
売価 $48.00 $36.00
貢献利益 CM1 $20.61 $8.96
損益分岐ROAS 2.33 4.02
実際のROAS 3.2 3.6
1注文あたりの広告費 $15.00 $10.00
貢献利益 CM2 $5.61 −$1.04

ROASは上がったのに、1注文あたり1.04ドルの赤字です。

値引きで下がるのは売価だけです。着地原価も配送費もピック/パックも、値引きしても1セントも下がりません。売価が12ドル下がった分はほぼそのまま貢献利益から消えます。

損益分岐ROASは売価をCM1で割った数字です。分子の売価は25%しか下がらないのに、分母のCM1は半分以下になる。だから損益分岐ROASは2.33から4.02まで上がります。

ROASが3.2から3.6に改善しても、必要なROASは2.33から4.02に上がっています。改善した幅より必要な水準の上がり幅のほうが大きい。

値引き率ごとの損益分岐ROAS

同じ商品で値引き率を変えるとこうなります。

値引き率 売価 貢献利益 CM1 損益分岐ROAS
定価 $48.00 $20.61 2.33
10% $43.20 $15.95 2.71
15% $40.80 $13.62 3.00
20% $38.40 $11.29 3.40
25% $36.00 $8.96 4.02
30% $33.60 $6.63 5.07

値引き率を5ポイント上げるごとに損益分岐ROASの上がり幅は大きくなっていきます。15%から20%で0.40、20%から25%で0.62、25%から30%で1.05。

値引きが深くなるほど、同じ5ポイントの重みが増します。30%引きで広告を回すなら、ROAS 5.07が必要です。

上限を逆算する式

この関係を逆にたどると値引き率の上限が出ます。

売価に連動しない費用 = 着地原価 + US国内配送 + ピック/パック + 返品 + 決済手数料の固定分

値引き後の売価の下限 = 売価に連動しない費用 ÷(1 − 決済手数料率 − 1 ÷ 見込みROAS)

値引き率の上限 = 1 − 値引き後の売価の下限 ÷ 定価

売価が変わっても動かない費用をまとめて1つにしています。売価に比例して動くのは決済手数料の2.9%だけで、これは式の分母に入っています。

48ドルの商品で見込みROASを3.6とします。

売価に連動しない費用 = $14.60 + $6.50 + $2.40 + $2.20 + $0.30 = $26.00

値引き後の売価の下限 = $26.00 ÷(1 − 0.029 − 1 ÷ 3.6)= $26.00 ÷ 0.6932 = $37.51

値引き率の上限 = 1 − $37.51 ÷ $48.00 = 21.9%

ROAS 3.6が見込めるなら、この商品の値引きは21%までです。25%にすると上の表のとおり1注文1.04ドルの赤字になります。

SKUによって、上限はここまで違う

同じ式を価格帯の違う3つの商品に当てはめます。配送費とピック/パック、決済手数料は共通です。

定価 損益分岐ROAS ROAS 3.0なら ROAS 3.6なら ROAS 4.0なら
商品A $48 2.33 15% 21% 24%
商品B $18 15.28 なし なし なし
商品C $96 1.92 29% 35% 37%

右の3列が値引き率の上限で、小数点以下は切り捨てています。一律25%引きにするとどうなるか。

商品AはROASが4.02を超えない限り赤字です。商品Bは値引き以前に、単独で売れるなら広告で売ること自体が赤字です。定価でも損益分岐ROASが15.28あります。商品CはROAS 3.6なら35%まで下げられる余地を残しています。

一律の値引き率はAには深すぎ、Cには浅すぎ、Bにはそもそも当てはまりません。

商品Bのような低単価品は、値引きするならセットに入れて同梱で売るほうが筋がいい。単独で売れた場合と同梱で売れた場合で、同じ18ドルの商品の貢献利益が8.60ドル変わることは第5弾で書きました。

見込みROASに何を入れるか

式の中で一番不確かなのが見込みROASです。

ブラックフライデーの前後は広告の単価が上がり、同時に値引きでコンバージョン率も上がります。どちらが勝つかはブランドと商品で違うため、一般的な数字は当てになりません。

使えるのは自社の実績です。去年の同じ期間にその商品グループのROASがいくつだったか。ただし第2弾で書いたとおり、広告媒体が申告する売上は合計すると店舗の売上を超えることがあります。媒体の管理画面の数字ではなく、自社の売上で確かめたROASを使ってください。

去年の実績がなければ上の表のように3つ程度のROASで上限を出し、低いROASのときの上限を採用します。

広告の外で失う分

ここまでの上限は広告から来る注文だけを見ています。

値引きは広告経由ではない注文にも適用されます。メールで既存の顧客に送るコードや、検索や直接の訪問から来る注文です。こうした注文には広告費がかからない代わりに、値引きがなくても買っていた注文が含まれます。

48ドルの商品を25%引きで売るとCM1は20.61ドルから8.96ドルになります。定価でも買っていた顧客の注文では、1件11.65ドルをそのまま失います。ROASにはどこにも出てこない損失です。

既存の顧客に配るコードは広告と別に率を決めるか、対象の商品を絞る。値引きの上限は広告の計算だけでは決まりません。

使う着地原価は、11月に出荷するロットのもの

最後に式の最初の項目である着地原価について。

ブラックフライデーに出荷するのは、いま倉庫にある在庫です。どのロットから出荷されるかで、仕入日の為替レートも輸入した日の関税率も違います。第6弾と第8弾で書いたとおりです。

去年の着地原価や最新の発注の原価で計算すると、上限がずれます。入れるのは11月に実際に出荷するロットの着地原価です。

続けるための仕組み

難しいのは、これをSKUの数だけやることです。

売価に連動しない費用を出すには、SKUごとにロット単位の着地原価と3PLの費用、返品の実績が要ります。それを見込みROASのシナリオごとに計算し、期間が始まったら実際のROASと毎日突き合わせる。ブラックフライデーの週にこれを手で回す時間はありません。

craft8 はSKUごとにいま出荷しているロットの着地原価で損益分岐ROASを出し、実際のROASと並べて表示します。Shopifyの注文から値引き後の純売上高(Net sales)で計算するため、値引きを入れればその分だけ損益分岐ROASも上がります。期間中に損益分岐を下回ったSKUは、翌朝には分かります。


値引きの上限の出し方、商品グループごとの率の分け方。このあたりで手が止まったら、Xまでご連絡ください。

X:https://x.com/craft8io

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