赤字SKU(Stock Keeping Unit、在庫管理上の最小単位)を見つけましょう、という話はよく聞きます。
ただ実際のカタログを見ると、その助言は成立しないことが多いです。
手元にあるデータで言うと、あるブランドはSKUが400を超えています。上位39SKUで売上の50%、残りの300以上は月商1,000ドル未満。仕入先は96社に分かれています。
この状態で「SKUごとに着地原価を出しましょう」と言われても着手できません。400件分のインボイスと通関書類を突き合わせる作業に、誰も取りかかれない。
だから調べないまま、全部残る。
必要なのは全件調査ではなく、調べる対象を10件以下に絞り込む方法です。
赤字は「原価が高い」から起きるのではない
先に前提を一つ。
赤字SKUというと、原価率の高い商品を想像します。実際にはそうとは限りません。低単価の商品のほうが圧倒的に赤字になりやすい。
理由は注文1件あたりにかかる費用が、売価にほとんど連動しないからです。
US国内配送6.50ドル、3PL(Third Party Logistics、物流委託先)のピック/パック2.40ドル、決済手数料2.9%+0.30ドル。このうち売価に比例するのは決済手数料の一部だけです。
売価が変わると、この費用が売価に占める割合はこう動きます。
| 売価 | 注文単位の費用 | 売価に占める割合 |
|---|---|---|
| $12 | $9.55 | 80% |
| $18 | $9.72 | 54% |
| $24 | $9.90 | 41% |
| $32 | $10.13 | 32% |
| $48 | $10.59 | 22% |
| $96 | $11.98 | 12% |
18ドルの商品は、広告費も返品もゼロでも、粗利率が54%なければ赤字です。
12ドルなら80%。この水準を満たす商品はほとんどありません。
低単価のSKUが赤字になるのは原価管理が甘いからではなく、価格帯の構造によるものです。
ただし、単独で売れた場合に限る
ただし上の表は、その商品が単独で注文された場合の話です。
18ドルの商品(着地原価6.30ドル)を例にします。
単独で購入されたとき 配送費6.50ドルと3PLのピック/パック2.40ドルが、この1件に全部乗ります。貢献利益は 1.18ドル。
48ドルの注文に同梱されたとき 配送費は元の注文ですでに発生しています。追加でかかるのは追加ピック分と決済手数料の増分だけ。貢献利益は 9.78ドル。
同じ商品、同じ原価で、8.60ドルの差です。
つまり低単価SKUの収益性は、商品そのものではなく買われ方で決まります。
だからスクリーニングの第一段階は原価ではありません。
3段階で絞り込む
Step 1 単独購入率を出す
Shopifyの注文データから、SKUごとに「1点だけの注文で売れた比率」を出します。
必要なのは注文明細だけで、原価は要りません。今日から着手できます。
低単価かつ単独購入率が高いSKUが、赤字候補の第一グループです。低単価でも、ほぼ常に他の商品と一緒に買われているなら優先度は下がります。
ここで400件が数十件まで減ります。
Step 2 必要粗利率と実際の粗利率を比べる
残ったSKUについて、上の表の必要粗利率を計算します。
必要粗利率 =(US国内配送 + 3PLピック/パック + 決済手数料)÷ 売価
ここで使うのは商品原価だけです。着地原価はまだ組みません。手入力済みの原価で構いません。
商品原価だけで見た粗利率がこの必要粗利率を下回っていれば、着地原価を足す前からすでに赤字です。国際輸送費も関税もまだ乗せていない段階でそうなら、調べるまでもありません。
ここで数十件が十数件になります。
Step 3 残ったものだけ着地原価を組む
十数件なら、インボイスと通関書類を突き合わせられます。400件では無理でも、この数なら1日で終わります。
ここではじめて、国際輸送費と関税の按分を入れた本当の貢献利益が出ます。
400件を調べるのではなく、調べるべき10件を先に見つける。これがこの順番の目的です。
見つけたあと、どうするか
赤字SKUを見つけても、削除が正解とは限りません。選択肢は4つあります。
1. 価格を上げる
必要粗利率の表から、その売価で成立する水準が分かります。18ドルを24ドルにするだけで、必要粗利率は54%から41%に下がります。
2. 単独で買えなくする
セット販売のみにする、最低注文金額を設ける、単独購入時のみ送料を課金する。買われ方を変えれば収益性が変わります。第3弾で扱った送料無料ラインと同じ構造です。
3. 同梱を促す
カート内で関連商品を出す。ただし第3弾で書いたとおり、追加商品が箱のサイズ帯を変えると配送費そのものが上がります。同梱を促す商品は、薄いもの、軽いもの、既存の空きスペースに収まるものを選んでください。
4. 落とす
在庫を持たない、発注を止める。ただしSKU数の削減はカタログの見え方やブランドの幅にも影響します。数字だけでは決められません。
どれを選ぶにしても、貢献利益が分かっていなければ選べません。
長い裾をどう扱うか
最後に、月商1,000ドル未満のSKUが300件ある状態そのものについて。
1件ずつ見ればどれも小さい。ただ合計すれば売上の相当な部分になります。そして着地原価の按分、在庫の保管費用、発注の手間は、売上の大小に関係なくSKUの件数だけ増えていきます。
この裾は個別には検討に値しないのに、全体としては無視できません。多くのカタログで裾が放置されたまま伸び続けるのは、そのためです。
四半期に一度、Step 1とStep 2だけでも回してください。原価を組まずにできる範囲でも、危ない候補は浮かび上がります。
続けるための仕組み
難しいのは、この3段階を繰り返すことです。
SKUが増えれば対象が増えます。仕入ロットが変われば着地原価が変わります。3PLの料金改定があれば必要粗利率そのものが変わり、前回の結果は使えなくなります。
craft8はこの計算を毎日自動で回すために作りました。Shopifyと広告媒体をつなぎ、通関書類と3PLの請求データを取り込んで、SKU単位の貢献利益を毎朝出します。スクリーニングを手で回す必要がなくなり、貢献利益がマイナスに落ちたSKUはその時点で分かります。
単独購入率の出し方、複数SKUが混在する注文の費用按分。このあたりで手が止まったら、Xまでご連絡ください。
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