3PL(3rd Party Logistics、物流委託先)の請求書は月に一度まとめて届きます。ピック/パック、入庫作業費、保管料、配送料。これをSKU(Stock Keeping Unit、在庫管理上の最小単位)ごとに割り戻さないと商品ごとの貢献利益は出ません。
割り戻すときに多く使われるのが出荷個数です。手元にあってSKUごとに正確に出るデータだからです。
ピック/パックならそれで正しい。出荷1件ごと、1個ごとに発生する費用だからです。
問題は保管料です。
保管料は「置いてある在庫」にかかる
保管料は売れた在庫ではなく、置いてある在庫に対して発生します。
売れずに棚を占めている商品ほど多く払うべき費用を、売れた数で割るとどうなるか。かさばって回転の遅い商品の負担が軽くなり、その分を小さくてよく売れる商品が肩代わりします。
合計は変わりません。変わるのはどの商品が払っているかです。
同じ4,900ドルを2通りで割る
ある月の3PLの保管料が4,900ドルだったとします。商品は3つです。
| 商品A | 商品B | 商品C | |
|---|---|---|---|
| 当月の出荷個数 | 736 | 700 | 478 |
| 平均在庫数 | 1,953 | 900 | 600 |
| 1個あたりの容積(立方フィート) | 0.35 | 0.08 | 0.10 |
| 在庫回転日数 | 80日 | 39日 | 38日 |
商品Aはかさばって回転が遅く、BとCは小さくて回転が速い。多くのカタログにある組み合わせです。
これを出荷個数で割る場合と容積×在庫日数で割る場合で比べます。容積×在庫日数は、その月に倉庫の空間をどれだけ使ったかを表す数字です。
| 出荷個数で按分 | 容積×在庫日数で按分 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 商品A | $1,884 | $4,107 | +$2,223 |
| 商品B | $1,792 | $433 | −$1,359 |
| 商品C | $1,224 | $360 | −$863 |
| 合計 | $4,900 | $4,900 |
商品Aの差は2,223ドル。出荷1個あたり3.02ドル、商品Aの純売上高(Net sales)42,600ドルに対して5.2ポイントです。
遅い商品の保管料を、速い商品が払っている
表の下半分を見てください。
出荷個数で割ると商品Bは保管料を1,359ドル、商品Cは863ドル多く背負います。純売上高に対してそれぞれ5.1ポイントと5.6ポイント。よく売れている商品ほど、実際より利益が薄く見えています。
これが発注の判断に効いてきます。
商品Aを追加で仕入れれば倉庫の空間はさらに埋まり、保管料の請求額は上がります。ところが出荷個数で按分していると、増えた分の多くはBとCに付け替えられます。Aを買い増すほど、Aではなく売れている商品の利益が削られて見える。Aの仕入を止めるべきだというシグナルが、A自身の数字に出てきません。
商品ごとの利益率が近いカタログでは、利益の順位そのものが入れ替わることもあります。
広告の損益分岐点が6.53から9.91に変わる
商品Aの貢献利益 CM1(Contribution Margin 1、広告費を引く前)と、損益分岐ROAS(Return on Ad Spend、広告費に対する売上の倍率)で見るとこうなります。損益分岐ROASはCM1 対純売上高比の逆数です。
| 按分の方法 | 貢献利益 CM1 | 対純売上高比 | 損益分岐ROAS |
|---|---|---|---|
| 出荷個数 | $6,523 | 15.3% | 6.53 |
| 容積×在庫日数 | $4,300 | 10.1% | 9.91 |
実際のROASが7から9の間で回っていれば、出荷個数の按分では黒字に見えて、実際には赤字です。広告を増やすかどうかの判断が、保管料の割り方ひとつで逆になります。
容積×在庫日数の出し方
必要なのは3つです。
容積×在庫日数 = 1個あたりの容積 × 平均在庫数 × 日数
SKUの保管料 = 保管料の請求額
× (そのSKUの容積×在庫日数 ÷ 全SKUの合計)
1個あたりの容積は、倉庫で保管されている状態の寸法で取ります。マスターカートンのまま棚に置かれているなら、カートンの容積を入数で割ります。個装の寸法で計算すると実際より小さく出ます。一度登録すれば商品が変わらない限り使い続けられます。
平均在庫数は3PLの在庫レポートの日次在庫数から出します。
日数は請求期間の日数です。
按分しないほうがいい部分
保管料のうち固定契約分や最低請求額は、荷量が減っても変わりません。これを貢献利益に入れると出荷の少ない月ほど、1個あたりの費用が膨らんで見えます。
貢献利益に入れるのは、荷量に比例する部分だけにするのが本来の考え方です。固定部分は事業全体の固定費として別に扱います。
続けるための仕組み
難しいのはこれを毎月続けることです。
寸法を登録し、在庫数を取り、請求書の保管料を割り戻す。ピック/パックは出荷実績で、入庫作業費は該当するロットに直接つける。明細の種類ごとに配分の根拠を変える必要があり、SKUが増えるほど作業も増えます。
craft8 は保管料を容積×在庫日数で按分します。SKUの寸法を初期設定で一度登録すれば、あとは3PLの請求書の金額を入力画面で確定するだけです。ピック/パックは出荷実績、入庫作業費はロットに直接つけます。按分した金額は、画面上で実測値と区別して表示します。
費目ごとの按分の考え方は、計算方法のページにまとめています。
寸法の取り方、在庫レポートの読み方。このあたりで手が止まったら、Xまでご連絡ください。
X:https://x.com/craft8io